第18回メールゼミ
こんにちは。
運輸安全.comの山本です。
第18回目の「運輸安全マネジメント」メールゼミです。
前回(17回)、前々回(16回)では、
「SHELモデル」の説明をしました。
更に「4M(5M)」についても触れましたね。
くどいようですが、ここでもう一度。
―――――――――――――――――――――――――
「SHEL」とは5つの頭文字でしたね。
それは、
L=Liveware(ドライバー本人)を取り囲んだ
S=Software(ソフトウエア)、
H=Hardware(ハードウエア)、
E=Eivironment(環境)、
L=Liveware(周りの上司、同僚、部下)。
―――――――――――――――――――――――――
「4M(5M)」とは、
Man(ドライバー本人)、
Machine(車両、機械・設備、安全機器等)、
Media(環境の要素:天候、作業環境)
Management(管理体制、制度)
及び
Mission(作業目的、達成手段)
―――――――――――――――――――――――――
そして、今回は、実際にあった事故を
「SHELモデル」で考えてみましょう。
実際の事故資料を国交省発表のものから引用しますね。
下のアドレスをクリックすると事故の詳細が表示されます。
http://www.unyuanzen.net/jikojirei1.html
まず、事故要因として
「車載してあったタイヤチェーンが未装着であった」
とありますね。
この場合、
「タイヤチェーン=H:Hardware(ハードウエア)」
ですね。
そして、タイヤチェーンを未装着にしていたのは
ドライバー本人ですから
「本人=L:Liveware(ドライバー本人)」
となります。
要するに
「L:本人」と「H:ハードウエア」の間に
“溝”があったことが問題のようです。
そして、この国交省の文書では再発防止策として
「乗客の安全を最優先した対策(タイヤチェーンの装着等)を
運転者に対して指導する」
とあります。
でも、でも
これで果たして良いのでしょうか?
もちろん、間違いではありません。
ただ、少々、安易なような気がするのは私だけでしょうか。
ここで考えて頂きたいのは、
なぜ、「L:本人」と「H:ハードウエア」の間に
“溝”が出来てしまったのか?
と、言うことですね。
その前に、事故要因は本当に
「車載してあったタイヤチェーンが未装着であった」
で正しいのでしょうか?
通常、事故や問題の「原因」を追究する場合、
なぜ、なぜを最低3回は行ってくださいと
お願いしています。
(5回必要と言う大手企業もあります)
(「原因」と「要因」の“差”は、今回無視します。
本来「原因=要因」とは言い難いですが)
この事故要因も、なぜ、なぜを3回した結果かもしれませんが、
他の視点で考える必要があるかもしれません。
なぜ、ドライバーはタイヤチェーンを装着しなかったのか?
当該、国交省の文書の
再発防止策に行きつくまでの
雪道での事故発生原因をシュミレーションしてみますと
(あくまで推測ですが)
事故:雪道で走行中のバスがカーブを曲がり切れずに路外に
逸脱した
なぜ、逸脱したのか?
原因1:道路に雪が積もっていてスリップした。
なぜ、スリップしたのか?
原因2:タイヤにチェーンが装着されていなかったから。
なぜ、未装着だったのか?
原因3:ドライバーは、まだ大丈夫と判断した。
乗客の安全最優先を認識していなかった。
と、なるのではないでしょうか。
「再発防止策」は、「原因」を取り除くための処置ですから、
この国交省の文書で再発防止策として
「乗客の安全を最優先した対策(タイヤチェーンの装着等)を
運転者に対して指導する」
と決定したのであれば、
事故原因として
前述の“原因3”
ドライバーは、まだ大丈夫と判断した。
乗客の安全最優先を認識していなかった。
と、推察できるわけです。
んっ? でも当該文書には「要因」として、
「車載してあったタイヤチェーンが未装着であった」
と、記載してありますね。
なんか、今一つ、しっくりきませんね。
(国交省の結論について、然るべき方たちによる分析結果ですし、
決定に至る様々な背景があったと思いますので、否定する気は
ないのでが)
そもそも、再発防止策として
「教育(再教育も含む)」というのは、
「周知徹底する」に次いで安易な再発防止策のような気がします。
私も、ISOの審査で企業にお邪魔する際、
不適合発生に対する是正処置(再発防止)として、
「周知徹底する」「再教育する」というのは、
間違いではないですが、他の方法は考えたのかと
疑問に思う事がよくあります。
当事例の場合、
“運転者に対して指導する”で問題ないことを
否定はしませんが、
次回、他の方法も考えてみたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒
あおいコンサルタント株式会社
運輸安全マネジメント推進協議会
山本昌幸(ISO9001・ISO14001主任審査員、行政書士、
特定社会保険労務士、運行管理者)
―――――――――――――――――――――――――
追伸(今回のオマケ):
私自身、いろいろな業界に「首を突っ込んでいる」のですが、
そこで思う事。
「皆さん、自分の業界以外も見てください」
と言う事です。
その最たるものとして、
「敵は、他の業界に居ますよ」
と言う事です。
自分の業界内で、ライバル企業と足の引っ張り合いをするより
業界外からの攻勢に備えるべきであると思います。
具体的なお話は、別の機会で。
|